正直、円安がここまで進むと、日本の音楽業界の中でも、特にフィジカル(CD・レコード、カセットなど)とライヴを支えている人たちにとっては、本当に厳しい状況になるだろう。
レーベル、レコード店、ディストリビューター、プロモーターは、ライセンス料、フィジカルの輸入コスト、輸送費、バンドのギャラや航空券などを、ほとんどドル・ユーロ・ポンド建てで支払っている。
一方で、CDやレコード、カセット、チケットは円でしか売れない。
この「外貨で仕入れて円で売る」構造は、いまの為替環境ではどうしても不利になる。
現在の為替水準(2026年1月/現状の目安)は、USD/JPY ≒ 159円、EUR/JPY ≒ 183〜185円、GBP/JPY ≒ 210円超。
ドル円は2024年7月以来の円安水準で、ユーロやポンドに対してもここ数年で極めて弱い円になっている。
つまり、海外に支払うコストは、主要通貨のほぼすべてで膨らんでいるということ。
この影響は、CDやレコードだけでなく、コンサートのマーチャンダイズにも直撃する。
Tシャツ、パッチ、フーディー、ポスターなどのツアー用グッズは、国内だけで作られるわけではなく、海外で製造されることも多い。
その場合、ライセンスフィー、素材費、プリント代、輸送費はすべて外貨計算が基本ベースになる。
また、日本で製造する場合でも、売上を分配する相手が海外であれば、為替の影響を受けて実質的なコストが上がる。
つまり、円安が進めば進むほどマーチの原価は上がり、価格を上げざるを得なくなる。
でも、会場で実際に売れる価格には限界があるよね?
その結果、バンドやプロモーターの収益が削られ、ツアー全体の採算も悪くなっていく。
そして円安が続くと、フィジカル文化にはこんな流れが生まれる。
円安 → 仕入れ・製造・輸送・マーチの原価が上がる → 新品のCDやレコード、カセット、グッズの価格が上がる → でも給料は上がらない → 新品が売れにくくなる → 中古や買い控えに流れる → 新譜や新作グッズが売れなくなる → 将来の中古として流通する作品自体も減っていく → 市場全体が痩せていく。
新品が売れない社会に、健全な中古市場は存在するのだろうか?
配信についても整理しておくと、海外のアグリゲーターを通して外貨建てで販売されている配信は“輸出”になるため、円安はプラスに働く。
しかし、円建てで精算されている配信や国内向けの売上は、為替がどう動いても収益はほとんど変わらない。
一方で、フィジカルは輸入盤だけでなく、国内製造のものも原材料費が外貨に連動している。
ライヴやマーチも同様で、コストの大半が外貨計算の影響を受ける構造になっている。
だから円安は、そのままダメージになる。
ただ、この状況を嘆くだけで終わるのは建設的ではない。
すでにフェスなどでも多く行われるようになった、海外バンドから国内バンドへのシフト、国内生産や小ロット化によるリスク低減、フィジカルやマーチを“安い消耗品”ではなく“持つ意味のあるもの”にしていくこと、そして海外への直販で円安を逆に活かすこと。
為替が厳しい時代でも、音楽文化を続けるためのやり方はまだあると信じたい。
円安は確かに大きなピンチだけど、日本のフィジカル音楽とライヴ文化をどう守り、どう次につなげるかを考えるタイミングでもあると思う。















