VAIN2017.04.24

Line-Up (1992):
Davy Vain (Vocals & Guitars)
Jamie Scott (Guitars)
Ashley Mitchell (Bass)
Tommy Rickard (Drums)
Danny West (Guitars)

Discography:
1989 No Respect
1994 Move On It
1997 Fade
2000 In From Out Of Nowhere (as Davy Vain)
2005 On The Line
2009 All Those Strangers (reissue)
2011 Enough Rope

Biography:
その独特な歌唱と哀愁のある中毒性のあるロックン・ロール・サウンドで、シーンに異彩を放つバンド、VAINが結成されたのは、1986年、サンフランシ スコでのことだ。ヴォーカリストでありギタリストでもあったデイヴィ・ヴェインを中心としてMETALLICAのカーク・ハメットのプロデュースの元、デ モをレコーディングしたことにより、その歴史が始まる。当時既に確立されていたユニークなヴォーカル・スタイルを持つデイヴィ以下、バンド・メンバーは、 音楽的技量はもちろんのこと、ルックスやデイヴィの持つバンドに対するビジョンへの理解も考慮に入れて選ばれた。同年暮れには、デイ ヴィ<vo>はじめ、アシュレイ・ミッチェル<b>、ダニー・ウェスト<g>、ジェイミー・スコッ ト<g>、トミー・リカルド<dr>というラインナップが確定し、本格的な活動を開始する。

VAINは最初のライヴ以降、常にソールド・アウトのクラブでヘッドラインを務めるバンドとなり、音楽雑誌などの関係者の注目も高かった。その中でも 『Kerrang!』誌においては、まだ契約さえしていないバンドであるにも関わらず表紙を飾るなど、デビュー前からシーンで話題となるバンドであった。 1987年の終わりには、いくつものメジャー・レーベルの関係者の前でショウケース・ギグを行い、興味を示した数社の中から、1988年、『Island Records』と契約を交わすこととなる。また、この頃デイヴィはプロデューサー業にも興味を持っており、『Enigma Records』からリリースされたベイ・エリアの若きスラッシュ・メタル・バンド、DEATH ANGELのデビュー・アルバム「The Ultra-Violence」のプロデュースも行っている。

1989年、VAINはファースト・アルバム「No Respect」で待望のデビューをする。今なお名盤と誉れ高いこのアルバムから“Beat The Bullet”と“Who’s Watching You”のプロモーション・ビデオが制作され、MTVの番組『Headbanger’s Ball』と『Hard 30/Hard 60』でヘヴィ・ローテーションされることとなった。アルバム発表後には、約1年にも及ぶアメリカ・ツアーだけでなく、 SKID ROWのサポートとしてイギリス・ツアーを行うなど、積極的なツアーを行い、独特のロックン・ロール・サウンドで文字通りVAINの中毒者を各地に増やし ていった。

しかし、1991年になり、バンドに暗雲が立ちこめる。来日公演を含むツアー終了後、セカンド・アルバムの発表に向けてスタジオに入っていたバンドは、 「All Those Strangers」と名付けられたアルバムを完成させる。後は発売を待つだけとなった矢先、ちょうどこの頃からシーンにおいてロックン・ロール/グラム に代わり、グランジ・ミュージックが台頭してき始めていたことも関係してか、何と経営難で契約していた『Island Records』が倒産してしまったのだ。結局、完成した「All Those Strangers」はお蔵入りとなり、ここ日本においても、『Burrn!』誌等にレビュー掲載もされたにも関わらず、発売中止となってしまった。また この年、ダニーとトミーがバンドを脱退してしまい、バンドは空中分解した形となってしまう。デイヴィはじめ残されたメンバーは、1991年、GUNS N’ ROSESを脱退していたスティーヴン・アドラー<dr>が中心となって再始動したROAD CREW(1985年にGUNS N’ ROSESに加わることになる、スラッシュ<g>とスティーヴン・アドラー<dr>、ダフ・マッケイガン<b>の3 人が在籍していたことでも知られるバンド)に合流して活動を行う。結局この時のROAD CREWとして音源は発表されることはなかったものの、この時の曲の何曲かは、後のVAINのアルバムで使われていくこととなる。

アルバムを発表することなく自然消滅となってしまったROAD CREWの後、1993年、ドラマーのトミーを除くオリジナル・ラインナップでVAINは復活、元LORDS OF THE NEW CHURCHのドラマー、ダニー・フューリー<dr>が加わり(アディショナル・メンバーとして、ROAD CREWのスティーヴンとショーン・ロリー<g>も参加)、アルバム「Move On It」をレコーディング。1994年にデビュー当時からVAINの人気の高かった日本でリリースするが、この頃から各メンバーの興味がソロ活動や他のバン ド/プロジェクトでのキャリアに向いていってしまう。結局、ダニーは日本のみでソロ・アルバム「Taste The Sounds」をリリース、ジェイミーはOZZY OSBOURNE BANDやBIG BLUE HEARTSのオーディションに参加、その後はBIG BLUE HEARTSでEAGLESのジョー・ウォルシュのアメリカ・ツアーをサポートするなどの活動をしていった。残されたデイヴィとアシュレイは、ドラマーに ルイ・セナー<dr>を迎え1997年にアルバム「Fade」を発表するが、ギター・パートをデイヴィ自身が担当するなど、VAINはデイ ヴィのソロ・プロジェクト的な色合いを強めていくこととなる。

こうしてソロ・プロジェクト的な色合いを強めたバンドではあったが、次のアルバム発表に向けてレコーディングを開始する。ギター・パートはほぼデイヴィが 担当した他、「Fade」でも参加していたアシュレイとルイがそれぞれベースとドラムで全面参加、一部の曲でRUFFIANSのギタリスト、クレイグ・ バーホースト<g>が参加する形で制作されたアルバムは、「In From Out Of Nowhere」とタイトルされ、2000年DAVY VAIN名義でリリースされた。尚、ジェイミーがレコーディングの終盤で復帰したものの、時間的な制約もあり、アルバムのオープニング・トラック “Push Me Over”の一部を担当するに止まったが、スタジオでの作業を楽しんだデイヴィのモチベーションは高かった。また、この年デイヴィは、ポップ・スターのク リスティーナ・アギレラのグラミー賞ノミネート曲、“I Am Beautiful”のヴォーカル・パフォーマンスのプロデュースを行った。

この後しばらく大きな動きがなかったVAINであったが、2005年1月、『Gott Discs』がファースト・アルバム「No Respect」を再発したことをきっかけに動きが活発化していく。オリジナル・メンバーでもあるダニーが復帰しジェイミーとのツイン・ギター体制が復活 すると、同年「On The Line」をリリースし、各方面から賞賛を得ることに成功した。続いて敢行したNEW GENERATION SUPERSTARSをサポートに従えたイギリス・ツアーは、その中のあるショウが『Kerrang!』誌のライター、スティーヴ・ビービーにより最高評 価の5Kをマークされるなど、大成功となった。また、2009年にはお蔵入りになっていたセカンド・アルバム「All Those Strangers」が500枚限定ながら遂に日の目を見ることとなり、その後のヨーロッパ・ツアーではほとんどのショウがソールド・アウトとなった。

大成功のツアーの反響もあり、制作意欲も高かったデイヴィは、次なるアルバムに向けての準備を開始、2011年にレコーディングに入った。レコーディング には、一部の曲でルイやフレイザー・ラニー<b>がアディショナル・ミュージシャンとして参加したが、トミーを含めたオリジナル・メンバーが 全員参加しただけでなく、かつて共にROAD CREWで活動し、その後一時VAINにも参加した盟友、スティーヴンとショーンがゲスト参加するなど、作業は順調に進んでいった。

「Enough Rope」と名付けられたこのアルバムは、デイヴィの類い稀にみる独特のヴォーカルで歌われる憂いを帯びたメロディが満載で、一度聴いたら忘れることがで きない魅力溢れる仕上がりになっており、名盤と誉れ高いファースト・アルバム「No Respect」に匹敵する最高傑作との呼び声も高い。まさに彼の強烈な才能とインパクトが濃縮された集大成的なアルバムに仕上がっており、世界中に VAIN中毒者を続出させるであろう。日本盤はボーナス・トラックを追加して2011年10月にSPIRITUAL BEASTよりリリースされる。尚、日本盤の初回生産限定盤は、お蔵入りとなっていた幻のセカンド・アルバム「All Those Strangers」を全曲収録したボーナス・ディスクを追加した2枚組仕様となっている。また、タイミングよく、2012年夏に公開予定のトム・クルー ズ主演の映画、「Rock Of Ages」にも、劇中でVAINの楽曲やポスターが使用されることになっており、ニュー・アルバムと合わせ、かつてのファンをも巻き込んでの話題となるはずだ。